茨城編 最終章 決断の夜

コンプリートよりも大切なもの

諦めたくなかった旅路の先で

21時。奥久慈だいごで温泉に浸かり、俺はいつもより早めに床に入ろうとしていた。心地よい疲労感があった。明日は営業日となる道の駅みわへ向かう予定だ。みわは俺の自宅から最も遠い道の駅。ここまで来たのだから、ぜひ訪れておきたかった。

さらに日立おさかなセンターにも立ち寄りたい。

残る道の駅たまつくり、道の駅いたこも含め、茨城県制覇へ向けて少しでも前進したいと思っていた。

しかし、その夜は違った。突然、喘息の発作が襲ってきた。胸が苦しい。呼吸が浅くなる。俺は慌てて吸入器を探した。だが、どこを探しても見つからない。どうやら家に置いてきてしまったらしい。仕方なく車外へ出た。

夜の空気をゆっくり吸い込みながら、呼吸を整える。発作が落ち着くのを待つしかなかった。約1時間。ようやく呼吸が楽になり、俺は再び布団へ潜り込んだ。

これで眠れる。そう思ったのも束の間だった。再び発作が始まった。俺はまた車外へ飛び出した。静まり返った道の駅。夜空を見上げながら呼吸を整える。そして再び1時間。

ようやく落ち着きを取り戻した頃、俺はあることに気付いた。もしかしたら原因は布団ではないか。今回持参した布団が、喘息を誘発している可能性があった。

俺は考えた。

明日になれば道の駅みわは営業している。ここからも近い。どうしても行きたい。日立おさかなセンターにも行きたい。まだ訪れていない道の駅たまつくり、いたこも残っている。ここで帰れば、茨城県コンプリートはお預けだ。

しかし現実は冷静だった。この布団を使う限り、今夜また発作が起きる可能性が高い。そして次の発作が、今回程度で済む保証はどこにもない。俺はしばらく考えた末に結論を出した。

撤退しよう。

悔しかった。だが、無理をして続ける旅ではない。旅はまた来ればいい。身体を壊してしまえば、その先の景色を見ることはできない。

俺は腹を決めた。静かな道の駅の夜、帰宅のための準備を始めた。

孤独な帰還

帰宅の準備を終え、私は道の駅奥久慈だいごを後にした。本当なら、明日は道の駅みわへ向かう予定だった。日立おさかなセンターにも行きたかった。残る道の駅たまつくり、いたこも訪れたかった。後ろ髪を引かれる思いを無理やり振り払いながら、俺は自宅へ向けて車を走らせた。

ナビを見る。自宅まで約3時間。決して短くはない距離だった。暗闇に包まれた国道をひたすら南へ向かう。対向車はほとんど来ない。後ろを走る車もいない。完全な孤独だった。昼間の旅とは違う。周囲の景色は見えず、頼れるのはナビだけだ。土地勘は全くない。今どこを走っているのかも分からない。方角さえ分からない。ただナビの指示だけを信じてハンドルを握る。もしナビが無ければ、俺はきっと帰れなかっただろう。そんな不思議な不安と静寂の中を走り続けた。

1時間ほど走った頃、コンビニへ立ち寄った。購入したのはおにぎり2個と飲み物。日付はすでに変わろうとしていた。車内で静かに食事を済ませる。旅の途中の食事というより、帰還途中の補給だった。食べ終えると再び車を走らせる。

喘息の発作はすっかり落ち着いていた。やはり原因は今回持参した布団だったのだろう。そう考えると悔しかった。なぜあの布団を選んでしまったのか。それさえなければ。どうしてもそんな思いが頭をよぎる。しかし、しばらく走るうちに考えるのをやめた。これも旅だ。思い通りにならないことも含めて旅なのだろう。そう無理やり自分を納得させた。

旅を振り返る時間

しばらく走ると、どこか見覚えのある景色が現れた。「ああ、ここ通ったな」そう思いながら進んでいると、左手に道の駅常陸大宮が見えてきた。思わず目を向ける。駐車場には数多くの車が停まっていた。おそらく車中泊の車だろう。その光景を見て、改めて思う。やはりここはポテンシャルの高い道の駅なのだと。

そして、このあたりまで来ると方向感覚も少しずつ戻ってくる。道は分からなくても、どちらへ向かっているのかは何となく分かる。やがて国道6号へ出た。ここまで来れば、あとは南下するだけだ。ようやく心にも余裕が生まれた。

俺は今日一日の出来事を思い返しながらハンドルを握った。訪れた道の駅。見た景色。食べたもの。そこで出会った人たち。本当に道の駅は面白い。一つとして同じ場所はない。それぞれに個性があり、それぞれに魅力がある。

そしてふと思う。

紀伊半島の旅で若き相棒が教えてくれた道の駅アプリ。もしあれを知らなければ、この旅も始まっていなかったかもしれない。そう考えると、改めて感謝しかなかった。そんなことを考えながら車を走らせ続けた。

それでも無事に帰れた安堵

そして午前2時。俺は自宅の駐車場へ車を滑り込ませた。無事に帰ってくることができた。まずはそれで十分なのだろう。だが正直なところ、悔しさも残っていた。茨城県コンプリートは叶わなかった。残された道の駅みわ、たまつくり、いたこ。その名前が頭をよぎる。

しかし、それはまた次の旅の理由になる。旅が終わったのではない。続きができただけだ。そう思いながら俺はエンジンを切った。

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